第2回労務相談室 回状への対応の仕方
第 2 回
回状への対応の仕方
6月 14 日に発布された労働省からの回状が皆さんの困惑を起こしているようです。ちょうど
前回この『フェニックス労務相談室』でご紹介したシフトについて、ジャカルタ州知事が説明
に用いた内容とは似て非なる規定が定められているからです。そしてその規定には「2シフト
は少なくとも3時間の間隔をあけることを義務付ける」となっており、その後に2つのシフト
が記載されていますが、それと同じでないといけないのか、例なのかもよくわかりません。そ
の上その2つのシフトの就業時間は全体で8時間しかなく、一般的に休憩時間1時間を含めて
拘束時間9時間、実働時間8時間ですので、これは就業時間を短縮しろという規定なのかとも
思ってしまいます。けれども就業時間の短縮については全く触れていません。
「義務付ける」と記載されていますが、罰則が全く見当たらないのも解せないと思われるの
ではないでしょうか。それは法規の性質によるものです。今回の法規は「回状 Surat Edaran」と
いう形で発行されていますが、これは法的拘束力を持ちません。一方で法的拘束力を持たない
ため発行の承認手続きが比較的容易で早く発行することが可能です。これまでの COVID-19 関係
の規定に多く回状が見られるのはそのためです。
「法的拘束力を持たない法規」というのは理解しにくいと思いますが、インドネシアの法規
には優先順位があります。順位が高いものがより強い拘束力を持ちますので、上位の法規と異
なる規定を下位の法規で設定しても法的に無効となってしまいます。最も上位にあるのは憲法
Undang-Undang Dasar 1945 です。それに続くのが法律 Undang-Undang、政令 Peraturan
Pemerintah、大統領令 Peraturan Presiden、大臣令 Peraturan Menteri という順になり、最後が地
方令 Peraturan Daerah です。ここまでが法的拘束力を持ちます。
では回状とは何なのかですが、実際は勧告のようなものになります。であれば別に従わなく
てもいいのか、というとこれは非常に微妙です。それはインドネシアはまだ政府の勧告は従う
べきものという認識が強いことによります。罰則がないのだから別に従わなくてもいいとも言
えますが、政府からの印象はよくありません。できるところはできるだけ従うが、難しいとこ
ろはなぜ難しいのかを説明できるようにしておくのがベストと言えるでしょう。
たとえば今回の回状の場合、2シフトに分けることと、就業時間を1時間短くすることは可
能だが、2つのシフトの差は2時間しか開けられないなどという場合が考えられます。3時間
開けて実働時間7時間となると、一緒に仕事をできる時間は4時間しかなく、文書処理に通常
3~4時間かかることを考えると2日にまたがる可能性があり、多くの無駄な時間がかかって
しまうというような理論武装をしてみてはいかがでしょうか。規定は理解しており努力はして
いるけれどもこういう理由で難しいというのがインドネシア政府には比較的受け入れられやす
い攻め方となります。
関連法規:2020 年コロナ委員会回状第8号