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労務相談室

第58回 最低賃金の行方

第58回 最低賃金の行方

2024 年 10 月 31 日に 2023 年法律第 6 号の一部に対して違憲判決が下されました。21 条項に対して違憲と判断されましたので、その条項はこの違憲判決が下された期日を持って法の下で無効になります。一方で違憲裁判所には法規を定める権限はありませんので、今回の判決に基づき、政府側で新しい法規を策定することが求められていますが、新しい法規が定められるまでは2023 年法律第 6 号の前に有効であった法規が有効となります。

【最低賃金規定に関する違憲部分】
違憲判決の対象となった条項のうち最低賃金に係る内容は 2023年法律第 6 号の第 88 条第 1 項、第 2 項、第 88c 条、第 88D 条、第 88F 条、第 90A 条、第 98 条第 1 項の 7 条項です。今回違憲判決が出たのが 21 条項ですので、なんと 3 分の 1 が最低賃金に係る項目ということになります。
この中で特に注目されるのは翌年の最低賃金額を算出する計算式とセクター別賃金の 2 つではないかと思います。この 2 つのポイントはいずれも、2023 年法律第 6 号の前身とも言える通称オムニバス法および雇用創出法 2020 年法律第 11 号で大きく変更になった部分です。旧法に戻るのではないかと戦々恐々とされている会社は少なくありません。
現状では本来であれば 11 月 21 日までに発表されなければならない州最低賃金は現在に至るまで発行されていません。外遊からプラボウォ大統領が戻るのを待って発表するという情報もありましたが、今回いつ頃どんな形で、どのような数字が出てくるのかは現状全く見えない状況になっています。

【今何をすべきなのか】
今後どのような変更が行われるのかは神のみぞ知るなのですが、これまでの最低賃金の設定に係る様々な動きを鑑みますと、まず設定が遅れることは間違いありません。そして設定が遅れても新しい最低賃金は 2025 年 1 月 1 日から有効となることも、おそらく間違いないでしょう。たとえその設定の発表が 2025 年 1 月 1 日以降になったとしても、これまでの何度も同じ例があることから、遡及される可能性は大変高いといえるでしょう。まずは今後出てくる最低賃金を待つしかないということになります。
またインフレ率や GDP 率がどのように計算式に影響してくるのか、そしてなくなっていたセクター別賃金が復活するのかなど、心配ごとが山積みですが、いずれにしても決定を待つしかありません。プラボウォ大統領は計算式を変更するように命じたという報道もありましたし、調子に乗った労働組合連合は最低賃金が変わらなければ大規模デモを行うと脅しに入っています。インドネシアの労働分野が逆戻りする気配が感じられ残念な限りですが、まずは慌てず、自社労働組合の様々な声も「規定が出るまではまず静観した上で、規定が発効されれば会社は法規は遵守する」という態度で距離を置くのが得策かと思います。インドネシアは法治国家であるはずですが、このような動きの際には法規をきちんと設定し、それを遵守するというあるべき姿が大切にされないところがあります。決まっていないものを勝手な想像に惑わされ、慌てて何かを変更するということは後で困ることになる可能性がありますので、しっかり状況を見極める姿勢が必要です。

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