第3回労務相談室 有効なITAS保有者以外の入国
第 3 回 有効な ITAS 保有者以外の入国
コロナ禍において種々の規定が日々発行される中、外国人の入国に係る規定も何度も発布さ
れました。現状では有効な一時滞在許可(Ijin Tinggal Terbatas、通称 ITAS)を保有する外国人のみ
の入国が認められています。一方で多くの方が一時帰国なさっており、一時帰国中に ITAS の有
効期限が切れてしまった方や新規赴任するためのビザを取得できないまま待っていらっしゃる
方も多いのが現状です。今回は実際に入国された実例等を見ながら、運用状況を共有させてい
ただきたいと思います。
【ITAS 有効期限切れ後の入国ケース】
まずは ITAS 有効期限が一時帰国中に切れてしまった方のケースです。インドネシア政府は救
済措置として「やむを得ない場合の滞在許可(Ijin Tinggal Keadaan Terpaksa Masuk、通称 ITKT
Masuk)の自動付与を発表しています。事前の申請処理等は不要でスカルノ・ハッタ空港から入
国が許可されるように見える規定です。しかし実際にはその許可を発行する際、いくつか確認
している文書があります。まずはすでに労働省から延⾧を許可された就労許可(Notifikasi、旧
IMTA) の写しです。現在も労働省は Notifikasi の延⾧処理は受け付けています。Notifikasi の延⾧
がまだできていないけれども会社と当該外国人労働者との間の雇用契約書を提示して許可され
た実例もあります。つまり担当者の判断に任せられるため、これがあれば必ずという規定はあ
りませんが、入国後本当に ITAS を延⾧するということを理解されれば許可を出しているようで
す。また雇用者である会社から「入国後必要許認可処理を行う」ことの表明書の提示も求めて
います。確かに ITKT Masuk を得るための事前申請処理などは不要ですが、手ぶらで行くことが
できるわけではないのです。
また規定変更が実務処理を行う末端まで事前の周知が十分行われていないということはイン
ドネシアを知る方であれば容易に想像できます。このコロナ禍の規定が頻繁に変更している中
ではなおさらです。本 ITKT Masuk に関する規定のコピーを準備し、すぐに入国管理局官吏に提
示できるようにしておくと助けになるでしょう。ご自分がその対象となることを示す有効期限
の切れた ITAS も提示できるようにしておいた方が無難でしょう。
【新規ビザ申請】
次に新規ビザ申請ですが、こちらは確かに申請が停止しています。一方で、投資調整庁
(Badan Koordinasi Penanaman Modal、通称 BKPM)が現在少しでも門戸を開くべく当該省庁宛の
推薦状の発行を始めています。発行された推薦状を確認してみますと、「当該外国人に対するビ
ザ発行をお願いする」と記載されており、これにしたがい特別処理を行うのではないかと思わ
れます。新規ビザ処理を開始できる感染状況にないインドネシアですが、一方で経済を動かし
たいのも本音であり、このような特別なお願いに対して答えてあげるという姿勢を示しながら
新規ビザの処理を開始しようとしているように見えます。投資調整庁通達は6月 11 日に発行さ
れていますので、やっと推薦状が出始めたところです。これを用いて申請したビザが本当に発
行されるのかはまだ実例がありませんので、注視が必要です
関連法規:2020 年法務人権省入国管理局回状第 2493 号、2020 年投資調整庁通達第8号