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労務相談室

第59回 最低賃金の対応

第59回 最低賃金の対応

前回、最低賃金は正式な発表があるまで対応せず、静観することをお勧めしました。そんな中で法規にしたがうと新しい州最低賃金を制定する期限を越えてから大統領が計算式もなくいきなり最低賃金の昇給率は 6.5%と決めてしまいました。またセクター別最低賃金も定めることを義務付けました。県/市最低賃金を定める期限も越え、各地方は大混乱です。そんな中で州および県/市最低賃金は軒並み 6.5%の上昇で決定し、セクター別最低賃金は地域によって隔たりはありますが、いくつか設定されている地域が多く、10%を超える上昇率になった設定もありました。こんな中で各社の年次賃金調整交渉はどうしたらいいのでしょうか。

【本当にこれで決定か】
恐らく州および県/市最低賃金は 6.5%の上昇で決定でしょう。大統領の決定に歯向かう州知事も労働組合連合も現状ではでなさそうです。心配なのはセクター別最低賃金です。最低賃金を労働者側、企業側、政府側の 3 者からなる賃金委員会で合意していた時代は、新しい最低賃金が適用される 1 月 1 日を大きく越えてから定められ、1 月 1 日に遡及して適用されるということが何度も起こっていました。つまりこれからも 2025 年 1 月 1 日から施行されるセクター別最低賃金が設定される可能性は残されているということです。
また 10 月末の違憲判決を施行しない場合は全国的ゼネストを行うと政府側を脅していた労働組合連合の姿勢も一抹の不安があります。違憲判決には州セクター別最低賃金は設定する義務があるとされていますが、実際にセクター別最低賃金を設定している多くは県/市です。労働組合連合が政府側に圧力をかけ、セクター別最低賃金の設定を強制しようとするかもしれません。

【最低賃金規定遵守と年次賃金調整】
年次賃金調整をいつ行うのかは就業規則/労働協約/社内規定で定められているはずです。一方ですでに発表された州や県/市最低賃金は 2025 年 1 月 1 日から施行されますので、定められた最低賃金を下回る賃金を支給することはできません。まずは最低賃金規定に抵触する社員の賃金を最低賃金額まで、もしくはそれ以上に引き上げるという対応は必要です。一方で社員の福利厚生の一環であり、人事評価の成果ともなる年次賃金調整は会社の状況をしっかり鑑みた上で交渉する必要があります。最低賃金上昇率が 6.5%なのだから、全社員 6.5%の昇給が必要なのではありません。最低賃金規定はあくまで会社が払うことのできる最低賃金額を定めたものであり、昇給とは無関係です。もちろん社員の生活レベルを維持するために物価上昇率などを鑑みベースアップを行う会社は多いですが、最低賃金上昇率は最低昇給率ではないのです。最低賃金上昇額もしかりです。ベースアップを最低賃金上昇額に合わせる会社もありますが、これは最低賃金額まで賃金を上昇させることで賃金額の逆転が発生する可能性があるため、全社員同額のベースアップを行うという対応をしているだけです。
インドネシアは同じ会社内でも賃金格差が大きいので、率での昇給を行うと昇給予算の大多数を賃金水準の高い社員に使ってしまうことになります。労務費高騰を押さえるためには率での昇給にまずは一石を投じてみてはいかがでしょうか。

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