第37回労務相談室 法規と実務の調整
第37回労務相談室 法規と実務の調整
昨年から混乱を極めている最低賃金規定ですが、州最低賃金決定期限である 11 月 20 日の直前 (11 月 16 日)に 2022 年大臣令第 18 号を発布しました。その内容は 2021 年政令第 36 号と異なっており、2023 年最低賃金に限定した規定とはいえ、法的には明らかに法律違反と思われます。 一方で 2022 年ジャカルタ特別州最低賃金に関する法律違反の判決が出たのが2022 年 11 月です から、「これは法的におかしい」と思ってもその規定が無効となるまでかなりの時間が必要です。けれども 2023 年 1 月 1 日から新最低賃金の支給を義務付けられ、労働組合から年次賃金調整の交渉を要求される会社側としては、正式な法律違反の判決を待っていられない現状があります。会社側が実務を調整していくにあたり、何に配慮しなければならないのでしょうか。
【会社の能力と市場動向】
セクター別最低賃金を定めていたオムニバス法以前は政府が定める最低賃金額が能力的にかなり厳しいと感じる会社が多かったため、どうしても最低賃金決定に引きずられてしまう現状がありました。一方でオムニバス法によるセクター別最低賃金の撤廃、最低賃金決定のための統計局データと計算式により、2022年最低賃金は各社が適用している最低賃金額を下回るという異例の事態が発生しました。そして新最低賃金決定に基づく減給を禁じていたため、各社は各社の判断で年次賃金調整をしなければならなくなりました。 とはいえ本来の最低賃金というのはセイフティネットですから、最低賃金に振り回される時代を克服したとも言えるでしょう。各社での能力、業績、そして市場動向を見ながら独自であるべき賃金額を設定していくべきなのです。
【法律違反の判決を待てない現状】
一方で 11 月 28 日に設定期限を延⾧された州最低賃金はこぞってこの 2022 年労働大臣令第 18 号を適用するという形となり、オムニバス法の計算式を上回る決定をしています。この流れを見るとおそらく県/市最低賃金も同じ流れになるのではないかと思われます。声高に法的に違反していると言っているインドネシア経営協会(APINDO)も続々発表される最低賃金額に一つ一つ 対応しません。つまり実際には上がってしまった最低賃金を参照しながら各社で年次賃金調整 を行い、そのほとぼりが冷め、今更元に戻すこともできなくなったような時期に「実は法律違反です」という判決が出たりして、既成事実に負けてしまうということになります。 もしかすると政府はとてもしたたかで、もともとそれを狙っているのかもしれません。実際にはこの法規に基づく最低賃金額設定には労使両方から不平申立がされるという異例の状況になっていますが、13%UPを声高に叫ぶ労働組合も、オムニバス法の計算式を遵守しろと言う経営者側も、心の中では「これくらいなら仕方ないか」と思えるいい落としどころになっているとも言えるのです。本来の各社での対応に匙を投げた政府の策略に嵌らざるを得ない現状を突き付けられています。
関連法規: 2021 年政令第 36 号 PP-36/2021、2022 年大臣令第 18 号