第25回労務相談室 就業規律と罰則
第25回労務相談室 就業規律と罰則
オムニバス法の関係で就業規則や労働協約の内容確認のご依頼が増えています。そこで頻繁に見受けられる不具合の一つとして就業規律と罰則規定があっていないというものがあります。 就業規則/労働協約の改定を行うごとに増えていきがちな就業規律や禁止事項、罰則対象の違反なのですが、一つ一つの事項に集中してしまい、違反時の罰則との関連や整合性などが崩れてしまう場合があります。今回は就業規則と罰則の関係を見ていきましょう。
【罰則の種類】
労働関連法規に明記されている罰則としては警告書と停職、解雇がありますが、一般的にはこ の他に降格、減給、昇給抑制、損害賠償請求などがあります。同じ行為に対して 2 つ以上の罰 則を科すことが禁じられていますので、無断欠勤 1 日に対して賃金控除を行うが、警告書も発行するということはできません。無断欠勤 1 日に対しては賃金控除を、30 暦日内に複数回の無 断欠勤に関しては「重複した」という行為に対して警告書をというような分類をします。 またしばしば口頭注意という罰則を明記なさっている就業規則/労働協約がありますが、この取扱は簡単なようで非常に煩雑になります。罰則として明記するとこれは記録が必要になってし まうからです。特に第 1 段階警告書の違反は「口頭注意を受けたにもかかわらず」というような文言がよくあるのですが、では口頭注意をすでに受けた記録はどこにあるのか、というと「口頭だから記録はない」となってしまう場合が多いのです。日々口頭注意は必要ですが、これを罰則として記載する場合には注意が必要になります。
【遵守義務のある規律と違反行為の整合性】
就業規則/労働協約にはしばしば「就業規律」と称した「順守しなければならない規則」が就業態度、安全衛生、上司としての態度などに分類して列挙されています。けれどもここにある規 定のいくつかは罰則対象となる違反行為としては設定されていない、もしくは違反した場合の罰則と紐づけられていない場合が多いです。一方で「罰則」の項目にはそれぞれの罰則を科される違反が別途列挙されており、遵守義務のあるのに違反しても罰則が科せられない規則が生 じてしまっています。罰則がないと遵守を徹底できないということよりも違反をしても罰則が 科されるものと科されないものがあるという不整合の方が実務上問題になる場合が多いです。 とはいえ就業規律に記載したものを一つ一つすべて罰則対象の違反に入れ込んでいくことも煩雑な作業になりますし、改定した場合などに忘れたりする場合もあり管理も複雑になります。 そこで就業規則の項目に「就業規律の違反は重さに合わせた罰則対象となる」というような一文を入れておくか、各罰則に「上記と同様の違反を行った場合」という融通の利く一文を入れておくことをお勧めいたします。
関連法規:2021 年政令第 37 号 PP-37/2021