第35回労務相談室 減給方法
第35回労務相談室 減給方法
罰則の種類の一つに減給があります。「インドネシアでは賃金を下げるのは違法なのでは?」とよく質問を受けますが、賃金を下げてはいけないという法規定は存在しません。最低賃金額が 下がった場合などに「すでに支給している賃金を下がった最低賃金に合わせて下げることは許されない」などと記載するので賃金を下げてはいけないように拡大解釈しているだけです。とはいえ減給はもちろんとてもセンシティブな問題で、労使紛争に発展することもしばしばあります。どのように行うと少しでも紛争を回避できるのでしょうか。
【減給理由とその裏付け】
減給したいと思う理由は「業績が賃金額にマッチしていない」つまり目標未達成や能力不足ではないでしょうか。思ったように動いてくれない、言っていることが通じないなどと日々不満を募らせ、年初に定めた目標を達成できないことを理由に賃金を下げたいと思うのです。減給 はインパクトが大きいので感情的に実施するのではなく、まずは理由とその客観的証拠を準備する必要があります。たとえば目標未達成であれば「適切に」設定された目標と、その裏付けとなる達成状況を示すデータが必要です。社員本人が目標を提案し、達成状況がどうであるかの自己評価も行っているとより会社の立場は強くなると思います。 一方で違反行為により会社に大きな損害を与えたなどという理由は減給というよりは損害賠償に値します。賃金は社員の能力に基づいて支給されるべきものですから、それを減らすのであ れば、理由は社員の能力がその金額に見合っていないということを主張すべきです。
【減給額の設定】
では次にいくらまで減給するのかという点も明確な基本が必要です。ここで大きな力を発揮するのが賃金スケールと能力基準です。職務もしくは役職ごとの能力基準を具体的に設定していると当該社員の能力が実はどこの位置にあるかが明確になります。そしてその位置にいる社員に支払うべき賃金額は賃金スケールから算出できます。たとえばマネージャーの能力基準で100%満足できるラインの能力には不足しており、最低限必要な能力には達しているとします。 そこで 1 段階下のアシスタント・マネージャーの能力基準とも比較してみます。アシスタント・マネージャーの100%満足できるラインの能力には達しているが、わずかに上回る程度であることがわかるとしましょう。それであれば支払うべき賃金額はアシスタント・マネージャ ーの賃金スケールの真ん中より少し上ということになります。能力がどれくらいまで達成しているかを段階や率、点数で数値化できると賃金額はより明確に計算できます。もちろん能力基準や賃金スケールは減給額を設定するためのものではありませんが、本来はそういう使い方もできるはずのものです。そして賃金スケールは各社に設定する義務が定められています。「作ればいいもの」ではなく「しっかり使えるもの」を作っていく工夫が必要でしょう。
関連法規:2003 年法律第 13 号 UU-13/2003 第 92 条