第55回 労務相談室 口頭注意の生み出す混乱
第55回 労務相談室 口頭注意の生み出す混乱
罰則規定を確認すると、「口頭注意」という罰則を定めていらっしゃる会社が少なくありません。警告書ほど重い違反ではないが、細かく取り締まりたいような軽微な違反を対象にしていらっしゃる場合が多いようです。けれどもこの法規に定められていない「口頭注意」は取り扱いに注意しないと大きな混乱を生み出す可能性があります。
【記録を残す口頭注意】
口頭注意ですから、書面等は発行されず、直接口頭で注意するというイメージですが、言うだけですと「言った」「言わない」という問題が必ず発生します。ですから「口頭注意をしました」という記録を残しておかないと、次の違反が発生した時の証拠として用いることができません。部下を呼び出して注意した時は必ず「カウンセリングシート」のようなものを作成して人事に記録を残す等、何らかの対策が必要です。
また第 1 段階警告書発行の対象となる違反に「口頭注意を行ったにもかかわらず」というような表現がよくあります。警告書発行の条件ともなっていますので、ますます証拠が必要ということになります。
【前回の罰則有効期間中に再び違反をした場合の口頭注意の影響】
警告書は 3 段階からなり、そのもう 1 段階重いものが解雇となります。「第 1 段階警告書有効期間中に再び第 1 段階警告書を科され得る違反を行った場合、第 2 段階警告書が発行される」という規定は頻繁に見られます。では第 1 段階警告書有効期間中に犯した違反が口頭注意に入るものだった場合、次に科される罰則は何になるのでしょうか。第 2 段階警告書ですと、第 1段階警告書の違反より軽いのに⁇となり、じゃぁ 0.5 だと数えて口頭注意を 2 回受けたら初めて第 2 段階になることにしようというような、取り扱いが複雑になるような規定にすると今度はうまく管理できずに混乱してしまうことも多いです。明確に運用され、公平な対応として改善に役立つ罰則の設定のしかたはどのようにすればいいのでしょうか。
答はずばり口頭注意は罰則として使わないことです。実際には口頭注意は日々行われていると思いますが、他の罰則と組み合わせて罰則を重くするというようなことはかなり無理があります。口頭注意の記録も何に基づいて行うのかというと、種々運用は難しいところがあります。ですから指導として口頭注意は行うけれども、他の警告書等と組み合わせて、重複を問題にすることはセンシティブな問題を引き起こす可能性があります。就業規則等ですでに口頭注意を罰則の中に含めていらっしゃる場合、社員との間で納得性を得ていらっしゃれば継続が可能かですが、しばしば問題が発生する場合は、口頭注意の重複を第 1 段階警告書の違反として設定してみるのはいかがでしょうか。たとえば「30 暦日内に 3 回の口頭注意を受けている」というようなものであれば、上⾧の宣誓書などを下に科すことができますし、重複というのは 1回だけではないため、社員自身にとっても「注意されていない」と言いにくくなります。
いずれにしても罰則も社員の改善、指導を目的としていますので、本来の目的を忘れることなく、公平な運用を検討なさることをお勧めいたします。