第 60 回 評価システム
第 60 回 評価システム
年次賃金調整や賞与に社員の評価に基づく差はつきものです。社員のモティベーションアップ や公平な対応を目指し、社員の評価を行うのですが、言うは易し行うは難しで、社員の苦情が 殺到する場合も少なくありません。今回は評価システムで配慮すべき点は何かを考えてみまし ょう。
【年次賃金調整と賞与の評価の違い】
評価は会社が何を大切にするかを判断する基準になります。一般的には賃金は能力の反映であ り、賞与は業績の反映であるため、評価ポイントは異なってくるはずです。単に各自を 5 段階 のどれかという評価を選んだり、10 点満点の何点かで評価したりという総合評価のみでは主観 的な印象が影響し、会社のメッセージは伝わりにくいです。それぞれの評価の方法を検討し、 事前に社員に説明した上で、高評価を得られるように努力した後に評価を行うべきです。いき なり評価方法の変更を行い、評価するというのは社員側は公平ではないと思うでしょう。当該 年次が始まる前に評価方法の変更を説明し、「このように評価するので皆さんもそれに向けて 頑張ってほしい」と伝えることは社員の動機づけにもなるでしょう。 賞与は目標達成と設定した目標以外の活動での貢献度により評価するのが一般的です。目標の 難易度やどれくらいの時間を使うのかというウェイトなどを鑑み、計算式を設定します。重ね て日常業務をきちんとこなしているかなども評価の対象にする必要があります。一方賃金の方 はどんな能力が必要か、そして基準に合わせてどの程度の能力を持っているのかによって評価 する場合が多いようです。実務者であれば専門技能や知識に重点を置くとか、組織上の役職者 であれば専門技能や知識の他にマネージメント能力も加味する傾向が強いです。
【主観的評価をできるだけ避けるために】
評価項目が会社のメッセージであるとすると、評価方法は公平性を表します。主観的な雰囲気 ではなく、明確な基準を設定し、それを 100%満たしているかを判断すると言った具合です。 100%は客観的に判断しやすいのですが、80%か 70%かはとても主観的になりがちです。です から能力基準を「何ができる」という観点で役職、業務ごとにまとめておく必要があります。 そして当該役職の能力基準と 1 ランク下の能力基準と現在の役職の能力基準を比較し、現状が その差の 50%を越えているかどうかというような判断であれば客観的になりやすいです。 実際にはたとえば 5 段階評価で昇給額や賞与額を計算すると、社員の 8 割以上が真ん中になる ことが多いです。明確な評価を行い、大きな昇給や小さな昇給を作るべきという理論は理解していても「嫌われたくない」「怒るのではないか」「辞めてしまったらどうしよう」などとい う心配が頭をもたげてくるものです。ですから各評価の人数を割り当てるということをされる 場合があります。A は 5%、B は 15%、C は 60%、D は 15%、E は 5%と言った具合です。人数 の多い部署は調整しやすいですが、人数が少ない場合は柔軟に対応するしかありません。一方 で人数の少ない部署は担当業務が広く、その人の必要性が高まる傾向にあり、常に評価が高い という現象がしばしば発生します。評価の不公平は社員の不満が集まりやすいので、5 年程度 の履歴も含めた傾向の確認も必要です。