第10回労務相談室 違憲判決
第10回労務相談室 違憲判決
揉めに揉めている雇用創出法ですが、情報は錯綜しているもののいくつか既存の労働者権利が 減額されているようです。企業側の歓迎をよそに、当然ながら労働者側の大反発を受けていま す。その中で労働組合連合は憲法裁判所 Mahkamah Konstitusi へ違憲申立を行うことで戦うと明 言しており、すでに複数件違憲申立が申請されているようです。今回は違憲申立とはどのよう なものかを見ていくことにしましょう。
【違憲申立の焦点】
現在雇用創出法で問題となっているのは、法を制定するにあたっての正しいプロセスを踏んで いるかという部分です。各種報道によりますと国会で可決された後に法案の加筆修正を行って いることが問題となっています。可決された内容と異なるものを施行しようとするとこれは違 憲であるとして法全体が無効化されてしまうのです。もし無効化されると再度最初からプロセ スのやり直しということになりますし、勝利感満載となった労働組合側はその成立の阻止に活 発になる可能性が高く、施行が難しくなるかと思います。
一方でこれまでの違憲判決の多くは法制定のプロセスに注目したものよりは、上位法規との整 合性があるかどうかに係るものの方が多いです。大まかな序列としてインドネシアでは憲法 Undang-undang Dasar 1945―法律 Undang-Undang―政令 Peraturan Pemerintah―大統領令・決定 Peraturan/Keputusan Presiden ― 大 臣 令 ・ 決 定 Peraturan/Keputusan Menteri ― 地 方 令 Peraturan Daerah となっています。つまり上位法規と内容が異なっているということが証明されると法規 全体もしくはその違反した部分のみの無効化という判決が下されることがあるのです。現在有 効となっている労働法 2003 年法律第 13 号のいくつかの条項は違憲判決により無効となってい ます。判決が出たところから無効となりますので、判決以降その法規をもとに何らかの処理を 行うことは違法となります。
【違憲申立プロセスをどう見守るか】
現在の雇用創出法はすでに国会で可決しており、大統領の承認プロセスに入っています。大統 領が法規に署名した後、法務人権省が公布し、当該法規に記載された発効日から有効となりま す。一方で違憲申立は並行して処理されますが、それなりの時間を要します。つまり通常は法規が施行された後に違憲判決が出る形となり、まず可決された雇用創出法が施行される可能性 が高いです。この間各社の就業規則/労働協約の内容が雇用創出法とどうかかわっているかを確 認し、施行された場合の対応を検討しながら、動向を静観することになります。就業規則/労働 協約の記載方法によっては雇用創出法が施行しても規則変更ができない場合もあります。
関連法規:雇用創出法(現草案)