燃料の高騰等により久しぶりの高いインフレ率を記録し続けているインドネシアですが、このたびインドネシア政府は補助金付き燃料の価格を引き上げました。学生や労働組合から強い反発が起こりデモが頻発していますが、更なるインフレ率高騰は避けられないと思われます。 1998 年の通貨危機と関連付けて語るメディアも少なくありませんが、2023 年度最低賃金はこの影響をどのように受けるのでしょうか。

【オムニバス法による計算方法】

1997 年に始まった通貨危機によりインドネシアはインフレが進み、一時 60％を越える年間インフレ率を記録しました。その時の最低賃金は実は改定されていません。もちろん労働者の生活 に対する圧迫は大きかったのですが、最低賃金を上げることによる会社の倒産を避け、経済を維持することの方が当時は大切でした。インドネシア政府は常に「労働者寄り」と言われますが、そうでない判断を行う場合も実際には多くあります。今回のオムニバス法も同様です。 オムニバス法で定められた最低賃金額算出計算式が守られていないと何度も話題になっていますが、2023 年はどうなるのでしょうか。計算式で使われている数字の要素はGDP もしくはインフレ率、一人当たりの平均消費額、家族平均人数、家族ごとの平均就労人数です。インフレ率 と一人当たりの平均消費額がどこまで上がるかがポイントになるかと思います。

【労働者の要求はどこまで?】

一方で現在労働組合連合は来年の最低賃金を 10～13％値上げを要求しています。一方インドネ シア銀行のターゲットは 3％±1%、いくつかの銀行の予想は 4％弱という感じです。補助付き 燃料値上げは予想されていなかった可能性がありますので、少し上乗せがあるでしょうが、 10％に届くインフレになるとは思えません。その上ジャカルタの最低賃金に至っては現在控訴中の最も高い 2022 年最低賃金候補を元に計算しているというのですから、夢のまた夢的な数字になっています。とはいえ各社労働組合からの要求はこれらに影響されます。実際にインフレ率が 1.87％であった 2021 年の実質昇給率は 3％程度の会社が多いようでした。セクター別賃金 がなくなったこととオムニバス法計算式にしたがったことにより適用される最低賃金額が全く上がらなかった市/県が多いにもかかわらず、です。ですから 2023 年度が2022 年度を超える強 い要求が来ることは避けられないでしょう。

ではどのような対策で臨めばいいのでしょうか。まずは会社の姿勢をきちんと定めることでしょう。そして会社がオープンにできるデータをきちんと共有しましょう。また会社の状況や指針をしっかり説明する必要があります。「こんなこと言ってもわからない」と決めつけず、「データを開示すると悪用する」と思い込まず、コツコツと説明を続けることが結局最も組合を動かすのではないでしょうか。

関連法規：2020 年法律第 11 号 UU-11/2020、2021 年政令第 36 号 PP-36/2021