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第16回労務相談室 年次賃金調整

第16回労務相談室 年次賃金調整

人事関連の年 1 回かつ最大の焦点ともいえる年次賃金調整の時期が来ています。インドネシア の最低賃金が通常 1 月 1 日に改定になることを受け、年次賃金調整を 1 月から有効とされる会 社が多いようですが、実際の決定は周りの状況を見たり、労働組合との妥結を待ったりという ことで遅れて適用することも多く、決定後 1 月 1 日に遡及して支給する会社も多々見られます。 コロナ禍の影響および雇用創出オムニバス法の関連で今年はこれまでと少し異なった工夫が必 要となっています。どんな部分が異なるのかを具体的に見てみましょう。

【基本となる題材の少ない昇給要求】

これまでは最低賃金上昇率の倍以上の昇給要求を労働組合がまず行い、どれくらい最低賃金上 昇率に上乗せできるかが交渉の焦点となる会社が多かったのではないかと思います。一方で 2021 年最低賃金は最も高い上昇率でも 6.51%とこれまでより大きく下回ります。また雇用創出 オムニバス法の関連でセクター別最低賃金を設定する動きが見られていませんので、金額ベー スでみると事業分野によっては適用する最低賃金額が下がっている会社もあります。とはいえ 時間外労働賃金などが減っている労働組合側としてはいかにして大きな昇給を勝ち取るかを考 えています。昨年までの計算式である「インフレ率+GDP 上昇率」は使えないため昨年並みの 上昇率 8%を目標にしている労働組合が多いようです。

【将来性を見据えた業績評価】

一方で会社は「いかにして昇給を抑えるか」を考えています。明らかに受注が減り、操業率が 低下している場合は労働組合側もあまり大きな要求をすると会社側が本気で怒ってしまうこと を理解できます。けれども会社によっては実はあまり収益が減っているわけではない場合もあ ります。一方で 2021 年もコロナ禍の影響をどれほど受けるかまだ見えていないため、楽観視で きないということで昇給抑制を考えるのが経営陣の常です。ここで出てくるのが「不確実に備 える日本人経営陣」と「わからないものは考えても仕方がないから今貰えるものはすべてほし いインドネシア人社員」の対立です。「このまま 1 年間今の状況が続き、経済が圧迫されたら 賃金も払えなくなる。その時に会社閉鎖などを選ばなくていいように蓄えが必要だ」というような不安を駆り立てるやり方はかえって社員の不快感を増します。売上に対する利益率や賃金 を支給するために必要な最低売上高など数値で訴えていく方が効果的です。数値の提示により 自分で考えて分析することで妥協点を探る可能性が出てきます。

関連法規:雇用創出オムニバス法 UU-11/2020

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