第56回 労務相談室 第 2 段階警告書を直接科す違反
第56回 労務相談室 第 2 段階警告書を直接科す違反
インドネシアで最も一般的な罰則は警告書発行と解雇です。警告書には第 1 段階から第 3 段階までのレベルがあります。発行された警告書の有効期間中に違反を再度行った場合には警告書のレベルが上がり、第 3 段階警告書有効期間中に再び違反を行った場合には解雇処分にすることができます。
【各罰則を科す違反の設定】
罰則を科すのですから、どのような違反を行うとどの罰則を科されるのかを設定する必要があります。雇用創出法以前は第 1 段階警告書、第 2 段階警告書、第 3 段階警告書、懲戒解雇(法規の名称では重大な過ちによる解雇)のそれぞれを科す違反を設定していました。つまり第 1 段階から順番に罰則を科さなければならないのではなく、直接第 2 段階や第 3 段階、懲戒解雇をすることができていましたが、この規定が雇用創出法で少し変更になりました。直接科すことができるのは第 1 段階警告書、最初で最後の警告書(第 3 段階警告書とほぼ同義)、差し迫った理由による解雇(懲戒解雇と同義)の 3 つのみとなり、第 2 段階警告書を直接科すことができなくなったのです。第 2 段階警告書は第 1 段階警告書に当たる違反を再発した場合のみ発行されます。
【第 2 段階警告書を直接科していた違反の取扱】
雇用創出法が発布された当初はこの変更に対する注目があまりされておらず、労働省や労働地方事務局においても従来と同じ、各段階の違反を設定しているもので承認されていました。ですから再び更新を迎えた際にこの点の改定を考えておらず、そのまま登録申請を行うケ―スが多々見られます。最近は労働省や労働地方事務局から「第 2 段階警告書を直接科す違反は設定できません」という指摘を受け、「どうしてダメなのか⁇」というお問い合わせを受けることが増えてきました。定めた法規の徹底に時間がかかるのはインドネシアの日常茶飯事ではありますが、この改定がやっと市民権を得た感じです。
指摘としては「第 2 段階警告書を直接科す違反を削除するよう」という形なのですが、会社としては削除すれば「違反ではない」ということになり、「やってもいいこと」と理解されてしまいます。では第 1 段階警告書の違反として残そうとすると、「今までよりは重くない違反となった」ということで重要視されなくなる可能性があります。それならば最初で最後の警告書(第 3 段階警告書)にしようとすると、「今までと同じ違反をどうして重い罰則にするのか」と社員から不満を訴えられることにもなります。言うは易し行うは難しなのです。
あるべき姿は全体の違反の見直しです。違反は何か事象が起きて、適した違反が就業規則/労働協約に記載されていない時に「次回は追加しよう」と考え、都度訂正していることが多いです。会社の状況が変われば、違反の状況も変わるので全体の見直しを行わずにバランスが悪くなっているケースは多々見られます。罰則規定は会社の大切にしていることをしっかり社員に伝える機会でもあります。ですから各社の特徴が顕著に見られる部分であり、バラエティーに富んでいます。一度会社が大切にしたいこと、絶対に守ってほしいことなどを見直し、他の罰則の違反も含めて並べ替えてみてはいかがでしょうか。