第52回 労務相談室 出社しない社員
第52回 労務相談室 出社しない社員
インドネシア年間最大行事である断食明け大祭休暇が終わり、やっと平常の活動に戻りつつあるのではないかと思います。とはいえ今年の断食明け大祭休暇は 3 月〆の会社にとっては年次決算準備、新年度準備などが重なる 4 月中旬での休暇となりましたので、休暇終了後に山積みとなった対応に四苦八苦された会社も少なくないのではないかと思います。
そんな中で帰省後就業日初日にジャカルタに戻ってこない社員が少なからず見受けられます。退職の意思ない場合がほとんどですが、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。今回はインドネシアあるあるとも言える帰省後に戻ってこない社員の状況を取り扱います。
【復路チケットの予約をしていない】
まずは帰省の交通手段を見てみましょう。飛行機や鉄道を用いた帰省の場合は通常往復で予約をしますので、比較的安心です。とはいえダブルブッキングで乗れなかった、遅延で翌日になったなどのケースもあります。また政府が準備した無料帰省バス/船などを利用するケースもあります。こちらも予約制ですので、飛行機や鉄道と同様の状況です。自家用車で帰省している場合は渋滞こそあれ出発できないことはないでしょう。最もリスクが高いのは公共遠距離バスです。帰省する際はジャカルタ内/近郊のバスターミナル等出発地点で待ち、どんどんやってくる空のバスに順番に乗り込みますので、まだ順調と言えますが、戻りは各自の帰省先のバスターミナルやバス停、もしくはバス通路の路上で待つことになり、目の前を満員バスが通過していくのを眺めて待つことになるのです。この状態は毎年同じなので事情は知っているのですが、比較的楽観視しがちなインドネシアの皆さま、「乗れるだろう」と待ち続けて数日という人も出てきます。「帰りのバスがまだゲットできません」という理由で有給休暇の申請をする社員が続出するのはこのせいです。
【交通費が払えない】
インドネシアの皆さんの多くは計画的にお金を使うことが苦手です。いくら宗教大祭手当を貰っているからとはいえ、帰省日は給料日ではありません。帰省後給料日まで生活するのに費用が必要です。そのようなことも考えず、久しぶりに会った両親に大盤振る舞いし、親戚にお年玉を渡し、懐かしい友人達と飲食しながら夜通しおしゃべりを楽しめば宗教大祭手当などあっという間になくなってしまいます。さぁ帰ろうと思った時の交通費が足りない。誰かに借りようと思っても帰省している他の友人や親戚も似たり寄ったり。月額契約している携帯電話で仕方なく上司に借金を申し込むというケースは山のようにあります。いい大人にこんなことを言わなければならないのかと思いますが、「帰省時の交通費と同額は少なくとも銀行口座に残しておかなければ仕事に行けませんよ」「休暇後の生活費は 1 日あたりどれくらい必要か確認して、それも銀行口座に残しておかないと困りますよ」などと事前に指導する必要がありそうです。特に地方で採用活動を行った現場作業者にはしばしばこのようなことが発生します。「まさかこんなこともわからない⁇」ではなく「考えないかもしれない」と思って先手を打っておくことでリスクを回避できる可能性もあります。