第49回 労務相談室 賃金スケールの改定
第49回 労務相談室 賃金スケールの改定
新しい年 2024 年となりました。年始に頭が痛いのは政府からの最低賃金設定による影響と各社での年次賃金調整でしょう。最低賃金設定については前回の労務相談室で取り上げましたが、今回は各社で行った年次賃金調整の賃金スケールへの影響と、賃金スケール改定に伴い行わなければならない対応についてみて行こうと思います。
【賃金スケールの改定】
各社で賃金スケールを取締役会決定書で定めなければならないことは周知の事実です。近年賃金スケールの有無、その設定方法の是非を労働省からの監査で指摘されることが増えてきています。賃金スケールは義務付けられているから作るという面もありますが、各社の賃金状況の確認と、戦略的かつ適切な賃金支給を目指すためにはその基本となる賃金スケールを作成することは必要です。どんなものを作ったらいいのかよくわからないので、役職ごとの現状の最低賃金額と最高賃金額を使って表を作っているという会社も少なからずあると思いますが、それでは使える賃金スケールになりません。市場状況を確認し、どれくらいの賃金を支給することで社員の志気を上げながら、会社の業績を最大限にしていくかを考える必要があります。それぞれの役職がどれくらいの賃金であるべき、という役職と能力と市場の組み合わせで金額が決まっていくことが多いのではないかと思いますが、データ収集が一つの鍵となります。
また取締役会決定書 Keputusan Dewan Direksi で賃金スケールを定めますが、賃金額の入った表は別紙にしておくことをお勧めいたします。取締役会決定書のコピーを労働省が査察で要求することが少なからずあり、決定書内本文に書いてしまうとその金額が労働省内で一人歩きし、漏洩する可能性があるからです。
【賃金スケールの周知とデータ漏洩】
賃金スケールについてはもう 1 つ会社の義務があります。それは全社員に自分が所属するグループ/役職の賃金スケールを周知する義務です。賃金スケールを改訂した場合は、賃金額が変更になったグループ/役職に対しては再周知する必要があります。そしてその周知の証拠が必要です。労働省の査察ではその周知の証拠を確認することも増えています。周知方法は掲示、メールでの通知、給与明細書への記載、口頭での本人への通告など様々方法がありますが、掲示物やメール、給与明細書は流出のリスクがあります。口頭で各自に説明し、説明を受けたという書類に署名をしていくのが最も安全ですが、社員数の多い会社ではそんな手間はかけられない ということもあるでしょうから、組合員は掲示、非組合員は口頭説明というように組み合わせでの対応が現実的かもしれません。各社で合う方法を選択し、きちんと記録を残していくことが大切です。