第46回労務相談室 現地採用者雇用契約書(3)
第46回労務相談室 現地採用者雇用契約書(3)
これまで雇用契約の前提と契約終了に伴う支払い、賞与や宗教大祭手当を含む報酬設定について説明しました。今回はビザに係る義務や権利、それに伴う雇用契約の記載について取り上げます。
【就労許可の取得】
現地採用外国人労働者は外国人ですので駐在員同様就労許可(通称 IMTA)の取得が必要となります。就労許可の取得義務は雇用者にありますで、会社側の責任です。そして取得した就労許可に記載された期間、役職名に基づく職務分掌を厳守する必要があります。この遵守は労働者側の認識も必要ですので、雇用契約書に明記しておきましょう。就労許可を取得した後、一時滞在許可(通称 ITAS)や種々届出を行うことになりますが、通常はこの就労に伴って必要となる許認可や届出を行う義務も雇用者にあります。
一方ですでにインドネシアに別のスポンサー(たとえばインドネシア人配偶者)によって一時滞在許可を保有している外国人を採用することもあります。この場合は保有している一時滞在許可を返却後雇用者がスポンサーとして再取得する場合もありますし、保有している一時滞在許可をそのまま使うことも可能です。いずれにしたいかは労使で相談の上合意し、雇用契約書に明記しておくことをお勧めいたします。
【就労認可や種々届出の改定と返却】
就労許可や一時滞在許可は取得して有効期間中何もしないでいいのではありません。住所変更やパスポート番号変更などが起こった場合にはすべての届出を変更する必要があります。その処理には当然費用が掛かります。この費用負担や処理の責任を誰が持つかという合意も雇用契約書内で行います。通常は許認可処理全般の責任を雇用者が持ちますが、住所変更は会社の要望ではないので労働者本人が負担するとする場合もあります。住所変更やパスポート番号変更を社員が会社に迅速に届出する義務もありますので、徹底して即座に対応しましょう。
雇用関係の終了の際には就労許可等の返却(EPO)が必要になります。この返却義務の遂行も雇用契約書に明記しておく必要があります。インドネシア人社員とは異なり、雇用関係終了時に行う処理にいくつかの制限がありますので、辞職願の提出期限などもその処理期間を考慮の上設定しておく方がいいでしょう。就労許可等の返却後、本国へ帰国させる義務が雇用者にはあります。インドネシアを出国する義務が労働者にあることを理解されている方は多いのですが、雇用者が労働者を本国へ帰国させる義務については認識されていない場合も多いようです。雇用者が労働者を本国に帰国させた証拠を持っておく必要がありますので、出国時のスタンプや航空券などを保管しておく方が良いでしょう。
一方雇用関係締結前に一時滞在許可を保有しており、その許可を使っていた場合は一時滞在許可と就労許可のスポンサーが異なるため、就労許可を返却しても一時滞在許可を返却しませんので、出国義務が発生しません。とはいえ本国へ帰国させる義務は雇用者にありますので、対応の仕方を雇用契約書で合意しておく必要があります。本国に帰国するための費用を会社が支給し、それを帰国に使わなかった場合の責任は社員側にあるというやり方が一般的なようです。