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第43回労務相談室 評価における昇給と賞与の違い

第43回労務相談室 評価における昇給と賞与の違い

インドネシアでは日系企業の大半が 1 月もしくは 4 月に年次賃金調整を行います。一方で会社に義務付けられているわけではないのですが、日本の賞与の慣習にしたがい年 1 回もしくは 2 回の賞与を支給している会社が多いようです。賞与の支給時期は様々で、決算後かつ日本の賞与の時期の 1 つである 6 月や、もう 1 つの日本の賞与の時期である 12 月に支給する会社が比較的多い傾向があります。いずれも社員の評価を行い、それにしたがって計算する形を取っていらっしゃることが多いのですが、年次賃金調整が 4 月、賞与が 6 月となりますと、評価の時期が近いこともあり、違いが大きく出ません。評価のいい人はどちらもいいし、悪い人は両方悪いということで不満が出ることもあります。この2 つはどのように違うべきなのでしょうか。

【賃金額設定の基本】
賃金は何をもとに設定するのかという基本に立ち戻って考えてみましょう。賃金スケールを設定する際に役職ごとや階級ごとに作ることが多いですが、これは就業能力別設定と言えます。採用時は社員の能力に合わせて就ける役職が選択され、その役職の能力分の賃金設定を行います。その後同じ能力であれば、社員の同レベル生活を維持するための賃金調整は行われますが、それ以上の賃金調整は行われません。能力が上がることによって賃金は増えていくのです。ですから年次賃金調整の場合の評価項目は「就業能力が上がっているのか」という点に焦点を当てます。

【賞与とは何か】
賞与とは会社の利益配分の 1 つです。特定期間に得た利益をその利益を生み出した関係者に対して配分するのです。ですから賞与は社員がどれくらいその利益に貢献したか、つまり業績に基づいて支給すべきです。能力の上がった社員の業績はよくなるのが一般的ではあります。けれども市場の状況などの幸運があり、あまり努力していなくとも業績が上がる場合もありますし、逆に非常に努力していたにも拘わらず、市場が冷え切ったことで全く業績が上がらないということもあるでしょう。本来は年初に各社員の目標(KPI/Key Performance Indicator)をSMART(Specific – Measurable – Achievable – Realistic – Time Bond)に定め、客観的にその達成度合いによって評価しなければなりませんが、少なくとも賞与の評価項目は年次賃金調整の場合とは異なるはずです。何らかの事情により目標には含まれていない貢献を行うこともありますので、そのような場合も評価の対象として含めることができるように工夫が必要です。一方で製造ラインのオペレータのように自分の努力で生産数を増やしたりできるものではない職務もあ りますので、そのような場合は別の基準を検討し、勤怠状況、規定遵守状況、作業速度、改善提案数等業績に係る項目で評価をしていきましょう。支給目的、評価基準、評価項目を適切に定め、客観的に評価しておくことにより、社員に対する評価結果や今後の期待などの説明も行いやすくなります。
評価して支払えばそれでいいのではありません。年次賃金調整も賞与も社員のモチベーションアップが主目的であり、今後より大きな貢献を期待できる状況を作ることが大切です。

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