第9回 国外への支払に対する課税
第9回 国外への支払に対する課税
インドネシアの法人から、インドネシア国外にある法人もしくはインドネシア非居住者である個人へ支払いをするときには、どんな税金の処理が必要でしょうか。
形のある物を購入するような輸入取引では、PIBという輸入申告書に関税、PPH22(所得税第22条:前払法人税)、VAT(付加価値税)などが輸入する物の価格に応じて課税額が計算され記載されていますので、これを納税し通関を済ませます。
では、物がない取引の場合はどうでしょうか。例えば、①海外から提供されたサービスに対する報酬、②海外からの借り入れに伴う利息、海外からの投資に対する配当、③海外のノウハウやブランドを使用する際に支払うロイヤリティー、などは税関を通って入ってくるものではありませんので、自主的に申告が必要になります。
1. pph26所得税第26条
上記の①~③の取引に該当するような場合、インドネシア税法上pph26の課税対象となり20%源泉徴収し、国外の支払先へは80%相当額送金することになります。しかし日本を始めとし、多くの国との間でインドネシアは租税条約を締結していますので、一定の手続きを踏むことで租税条約の税率を適用することができます。各国条約による軽減税率は異なりますが、相手先の国が日本の場合、租税条約による税率は①は0%に、②は利息が10%、配当が15%に、③は10%に減額されます。このルールの適用には支払先が当該国の居住者すなわちインドネシア非居住者であることを示す「(居住者証明)DGT」という書類が必要となります。具体的には支払先の国の管轄税務署から証明書を発行してもらい、支払元であるインドネシアの管轄税務署へ届け出をします。そして支払元インドネシア法人は月次源泉所得税の申告書にこのDGTを添付しなければなりません。
なお、一度取得したDGTは会計年度に関わらず12ヶ月間有効ですので取引の都度取得する必要はありませんが、12ヶ月の有効期間がいつまでか注意しておく必要があります。
2.VAT Offshore
国外への支払いに対して課される税金は所得税だけではありません。付加価値を生む取引はVATの課税対象となります。例えば上記の①、③の取引はVAT税率10%が発生します。しかし国内取引のように支払先からFaktur Pajak(タックスインボイス)を受け取り、国外の支払先法人もしくは非居住者がインドネシアの納税手続きをするということはできませんので、支払元であるインドネシア法人が代わりにVATを納税するしくみになっており、これをVAT Offshoreといいます。よって、自主的に納付申告をしなければなりません。上記1で記述しましたDGTは所得税に関する軽減税率の適用を認めるものであり、VAT Offshoreの税率には影響がありませんので、DGTの取得によりPPH26がゼロとなった取引であってもVAT Offshoreの納付申告はしなければならないことに注意が必要です。
関連法令:財務大臣令 No. PER-25/PJ/2018
日イ租税条約第10条、第11条、第12条