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第41回労務相談室 有休一斉取得日の対応

第41回労務相談室 有休一斉取得日の対応

インドネシアの祝日の多くが宗教に関わっています。特にイスラム教に係る祝日に対しては月の満ち欠けを基準にして判断するので、直前にやっと実際の期日を決定することがよくあります。一方で政府は 1 年分の祝日を毎年 8 月頃に翌年分として決定し公布しますので、祝日の変更となるわけです。特にイスラム教で最も大切にされている祝日の 1 つである断食明け大祭 Idul Fitri に関し、断食入りが数日前に発表され、時折宗派によって期日が異なることすらあります。このような判断のない日本とは大きな違いです。

【有給休暇一斉取得奨励日の変更】
そしてその祝日が変更になったことにより、その前後に設定されていた有給休暇一斉取得奨励日cuti bersama が変更になることもあります。今年の断食明け大祭に係る連休でも同じことが起こりました。「えっ、いきなりそんなの困る」と思われたのではないでしょうか。民間企業としてこれをどうしていかなければならないのでしょうか。まず基本的な理解としては「有給休暇一斉取得奨励日」は「社員の有している有給休暇の取得を全社員同じ日に行うことを奨励する日」です。祝日ではありません。そして有給休暇の取得は社員の権利です。会社の効率や社員の取得しやすさ等を鑑み、一斉取得日の設定を提案することは会社の権利ではありますが、本来会社が勝手に決めることはできません。ですから労働組合のある会社は労働組合との合意を得てから決定し、労働組合のない会社は会社主導で決定はしますが、事前に組織を通じて意見を求めたり、二者協議会で情報共有をしたりしながら周知し、万が一社員からの反対があった場合はそれに対応する必要があります。

【有給休暇権利の控除】
有給休暇一斉取得日なのですから、当然社員の保有している有給休暇権利を控除するのが一般的です。けれども名前は有給休暇一斉取得日なのに、有給休暇権利を控除せず、会社公休日になっている会社が散見されます。1 つの理由は新入社員がまだ有給休暇権利を保有していないので控除できないから、と言うもののようです。この対応はいくつかありますが、有給休暇権利を保有していない場合は無給休暇となりますので、1 日分の賃金を控除するのが論理的には正しい方法です。ただ賃金控除されるなら休みたくないという社員もいるでしょう。大多数が休んでいるのに新入社員のみ出社しても非効率です。ですから翌年有給休暇権利が生じた際に控除し、それまでは賃金を控除しないという会社もあります。万が一有給休暇権利が生じる前に雇用関係を終了した際には退職金や謝礼金uang kompensasi と相殺するという方法もあります。ですから権利を保有していない社員やすでに有給休暇権利を使い果たした社員に対する対応は実はちゃんとあるのです。
それならば今後控除するようにしたいと考えるのが経営者の常ですが、一度得た権益を社員は簡単に放そうとはしません。論理的に正しく一見簡単そうですが、成功していない会社は多々あります。段階的に少しずつ全日程の控除に近づけていく会社もあります。社員との会話を密に行い、やるべき形を探っていく必要があるでしょう。

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