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第54回 労務相談室 守秘義務の理解

第54回 労務相談室 守秘義務の理解

社員の辞職願を受け取ると、まず頭をよぎるのは「競合他社に転職するのではないか」ということです。インドネシアでは競合他社への転職が当たり前に行われており、会社機密情報の漏洩が気になります。まだまだ守秘義務に関する意識が薄く、転職してしまえば他社の問題という認識もあり、現職の情報を期待してヘッドハンティングすることもあるほどです。完璧に遵守させることは難しくとも、少しでも守秘義務に対する意識の向上は期待したいところです。ではどのように守秘義務に対する理解を向上させたらいいのでしょうか。

【守秘義務とは何か】
まずは守秘義務とは何かをしっかり理解させることが大切です。就業規則/労働協約に守秘義務を明記する会社は少なくありませんが、そもそも論として守秘義務のある情報やデータとはどういうものかの理解ができているでしょうか。就業規則/労働協約に定義を明記することは 1 つの方法ですが、定期的な意識教育が有効です。毎年 1 回時期を定めて意識づけを行うことは社員の意識を高めるだけでなく、会社の徹底させたいという姿勢を見せるという意味でも有効です。整った法的な定義より、具体的にどのようなデータが守秘義務があるのかということを例示する方が理解しやすいと思います。顧客や協力業者の情報、販売価格や購入価格などは守秘義務があると理解されやすいです。一方製造工程、品質検査の手順、作業指示書の内容なども守秘義務がありますが、日々使っているものに対する守秘義務意識は低いようです。技術的な図面やフォームなどにも内容によって守秘義務があるものは多々ありますので、定期的に意識喚起をしていく必要があります。

【雇用関係終了後の守秘義務】
守秘義務遵守は、雇用関係終了後であっても義務です。競合他社に転職した場合などは一層気を付け、意識づけが必要です。けれども就業規則/労働協約の罰則は雇用関係がある間にしか適用されませんので、雇用関係終了後の守秘義務については個人の合意が明確になる雇用契約書での記載が有効です。退職時に守秘義務宣誓書のようなものを書かせるケースも見られますが、そもそも競合他社に転職して現在知っていることを自分の売りにしようと思っている人は宣誓書を拒否する可能性が高いです。自分が違反することがわかっているものにサインはしませんし、サインしないことで退職金のような何らかの権利が減るわけでもないからです。ですから入社時の雇用契約書に雇用関係終了後の守秘義務についても記載し、合意のサインを取っておくことは有効です。入社時に退職後のことまで考えて合意の署名はしないものです。とはいえすでに入社している社員に対しては雇用契約書に守秘義務の内容がありませんので、守秘義務宣誓書や就業規則/労働協約での記載などで代用するしかありません。雇用関係終了後の守秘義務についてを記載した就業規則/労働協約の改定の際に配布する小冊子の受領書と共に就業規則/労働協約遵守宣誓書のサインを社員から取っておくことも有効です。
それぞれの合意が法的にどれほど有効かということは不確かではありますが、社員に意識づけを行い、会社の意志をしっかり伝えることが何より効果がありますので、今後の対応を検討してみてはいかがでしょうか。

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